伊坂幸太郎さんの作品です。色んな意味で重い作品だと思います。

グラスホッパー (角川文庫)
伊坂 幸太郎
角川書店
売り上げランキング: 5398
おすすめ度の平均: 4.0
4 このパターンは
3 対峙
3 高をくくる=考えないようにする愚行。今の日本人にいえること。
4 面白いんだけれど、あと一歩かな
3 淡々とした物語
  • 概要
自動車事故で殺された妻の敵を討つために、会社に侵入した鈴木。そこで敵本人が自動車に轢かれてしまいます。「押し屋」の仕業だと確信した社員、比与子は後を追うように言います。一方、自殺屋の「鯨」、一家皆殺しを得意とする「蝉」もこの押し屋を追うようになり、物語は意外な形で決着を迎えます。

  • レビュー
この作品は......評価が分かれるといいますか、私は好きじゃないですね。あまりにも設定が現実離れしていて、感情移入できないというのが一つの理由です。

もう一つはオチです。このオチ、初見の人はまず気付かないようなオチになっています。自分も気づかなかったので、何回か読み返して気付いたのですが......衝撃は衝撃です。ただ、気持ちの良いものではありません。良い読後感は味わえませんね。

あまり良い読後感を残さない作品として、萩原浩の「」、東野圭吾の「夜明けの街で」、湊かなえの「告白」などがありますね。このどうしようもない感じで終わるのはゾクっとくるような感覚が味わえて結構好きなんですが、この作品の終わり方は、その感覚を味わえませんでした。

おそらく、オチに気付きにくいことや、気付いたとしてもそのオチがあったからといって、途中の物語を全て説明できないことが原因であると思います。

そのオチがあることによって、今までの問題点、矛盾点が氷解して行き、「えっ!ってことは!」と最悪の、どうしようもない展開を読者に予想させるようなオチであれば納得できたのだと思います。

タイトルに関しては、文中に説明がありますね。少し引用します。

「同じトノサマバッタでもいろいろいるわけだ。まぁ、理屈としては、仲間がたくさんいる場所で生きていると、餌が足りなくなるから、別の場所へ行けるように飛翔力が高くなるってことらしい」

「俺は、バッタだけの話ではないと思う」

「どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる。気づけば飛びバッタ、だ」
P.159
グラスホッパーとはバッタという意味ですね。作品中で人間は哺乳類よりもむしろ虫に近いという話があります。都会のゴミゴミした場所で暮らしていけば人間も変化してしまうと。この作品のキャラクターが猟奇じみているのはそこらへんを反映した結果なのかもしれませんね。

色々書きましたが、評価が分かれる作品であることは事実だと思います。読む人によっては、好みのオチであるかもしれませんので、良ければ一度(二、三度?)読んでみて下さい。


伊坂幸太郎さんの本です。「重力ピエロ (新潮文庫)」でも出てきた黒澤さんが泥棒として出てきます。

ラッシュライフ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 4965
おすすめ度の平均: 4.0
3 うーむ・・・
4 騙し絵
4 この作品があってる人
4 伊坂ワールド・・・
5 "テクニック"に☆5です。

  • 概要
この物語は5つの視点が切り替わって進行して行きます。金持ちの画商、戸田に付き添っている売れない画家、志奈子の視点、泥棒の黒澤の視点、「高橋」の信者である河原崎の視点、愛人殺害を目論む京子の視点、会社をリストラされて求職中の豊田の視点。それぞれの物語が絡まりながら、1つの終着点に向けて動き出します。

  • レビュー
5つの視点というのは自分の中でなかなか新しかったですね。普通の小説だとせいぜい2つか3つくらいでしょう。視点の移動の際に混乱しないように目印がついているのも親切設計ですね。

オチといいますか、この5つの物語のつながり方は面白かったです。「あのシーンはこういう風につながっているのか!」と、後半でわかったりして面白いですね。強烈なオチ!というわけではありませんが、ニヤッとさせられる仕掛けが多いので、飽きずに読めると思います。

ただ、テーマと呼べるものがあまりなかったと思います。どちらかというと、矛盾のないように注意して作られた物語という感じで、この作品で何を訴えたかったのか?があまり伝わらなかったですね。そのような小説でも良いのですが、そうであれば、もう少し強烈なオチが欲しかった所です。

でも伊坂作品らしく、セリフは洒落ているのが多いですね。

声に耳を傾けて、最善を尽くし、祈ること
P.126
これは神様と胃が似ていることを指摘して言ったセリフです。どちらも直接触れることはできないので、声に耳を傾けて、最善を尽くして祈ることしかできない。神様を胃で表現するというのは面白いですね。わかりやすい例えだと思います。

個人的には泥棒の黒澤さんが好きですね。セリフがいちいちかっこいいです。以下の2つがお気に入りのセリフですね。

人生については誰もがアマチュアなんだよ。
P.277
東野圭吾さんの学生街の殺人でも同じようなセリフがありましたね。人生は一度きりだから誰もが新人だと。良いセリフですよね。年をとっても新人のつもりで謙虚に生きたいものです。

世の中にはルートばかりが溢れている、とね。そう言ったよ。人生という道には、標識と地図ばかりがあるのだ、と。道をはずれるための道まである。森に入っても標識は立っている。自分んを見つめ直すために旅に出るのであれば、そのための本だってある。浮浪者になるためのルートだって用意されている
P.217
これは正確には友人の言葉ですが、黒澤が言った言葉を伝えているので、黒澤の言葉でしょう。いわゆるレールの上にのっかりたくないという人に聞かせてあげたいですね。

やはり伊坂作品は会話のやりとりを楽しむ作品とみても良いと思います。この会話に魅かれた人は、伊坂ワールドのとりこになると思います。伊坂作品未読の方は是非一度読んでみて下さい。


伊坂幸太郎さんの作品です。今の所、伊坂さんの作品の中でこれが一番好きです。(軽いネタバレあり)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
伊坂 幸太郎
東京創元社
売り上げランキング: 1711
おすすめ度の平均: 4.0
5 彼の描く「生」と「性」と「正」は非常に共感できる
2 多視点ミステリだが、底が浅くつまらない。
3 すじがきに惹かれたものの・・・
2 こういう本が売れるんですね...。
3 動物虐待や猟奇殺人あり


  • 概要
アパートに引っ越してきた大学生、椎名はいきなり隣人、河崎に「本屋を襲わないか?」と持ちかけられます。戸惑いながらも承知した椎名は河崎と一緒に本屋を襲撃し、辞書を奪います。一方、二年前に、琴美という女性と、外国人のドルジ、そしてプレイボーイの河崎の物語が同時進行で描かれます。二年前から現在に至るまで、どのようなことが起こったのでしょうか。

  • レビュー
この作品にはミステリーなどでよくみられるあるトリックが使われています。詳しく書くとネタバレになってしまうので、書けませんが、何といってもここが一番の見どころですね。この部分に差し掛かった時は思わず前半を読み返してしまいました。

他にもいくつかの伏線が隠されていますね。意味ありげなセリフを残して、登場人物なりの解釈を説明するというのは、伊坂さんらしい説明の仕方だと思います。少し、説明に納得できないこともありますが、それが伊坂さんらしさとも言えるかもしれません。

その伏線となっているセリフを一部紹介します。(伏線と気付きたくない人にとっては軽いネタバレとなっています。ご了承ください)

裏口から悲劇は起きるんだ
P.9

神様を閉じ込めておけば、ばれないって
P.72
後は教科書が消えた事件や、シッポサキマルマリのおみくじも、きちんと回収されていたのが良かったと思います。ミステリーの解決編を読んでいるような楽しさがありましたね。

伊坂さんらしさを残しつつ、衝撃の展開を間に持ってきているこの作品はかなり良書だと思います。是非一度ご覧あれ。

伊坂幸太郎さんの作品です。自分が始めて読んだ伊坂さんの作品ですね。

重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 1620
おすすめ度の平均: 3.5
3 山椒魚は何故悲しんだ?
3 家族の絆
2 この作品をお勧めできない人
2 なぜこんなに爽やか?
3 道化師

  • 概要
遺伝子会社に勤めている兄・泉水と、路上の落書きを消す仕事をしている春が主人公です。そこで連続放火事件が起こります。春は放火の法則性がわかったと兄に伝えます。弟の出生の秘密にも関わるこの事件に兄弟が出した結論とは......

  • レビュー
平凡な終わり方といいますか、さらっと終わって行く感じですね。事件についても驚くようなものではないです。途中からそうかな?と思わしてやっぱりそうだったという終わり方ですね。

この本の見どころはセリフの言い回しでしょうか?綺麗な表現が多く出てきますね。村上春樹さんの小説が好きな方はきっと好きになるのではないかと思います。

一部を抜粋して紹介します。

クロマニョン人は芸術を愛したんだよ、兄貴
P.44
これは、死に絶えたネアンデルタール人と生き残ったクロマニョン人の差を尋ねられた時に弟が言った言葉です。

本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ
P.449
これも良いですね。どちらもなぜ?という理由については言及されてないですが、美しい言い回しだと思います。

また、最後の方でこの本で一番の見どころとなる一言が出てきます。これを書いてしまうと楽しめないと思うので是非読んでみて下さい。これも綺麗ですよ。

もう一つ、この本には知的好奇心が満たされるという魅力がありますね。小説家や偉人のセリフを多数引用していますので、この点でも楽しめると思います。

余談ですが、この本には「ラッシュライフ (新潮文庫) 」で登場した黒澤という探偵が出てきます。他のシリーズを読んだ人に思わず「お!」と思わせる仕掛けをしている。こういう所が伊坂さんの人気の秘訣なのかもしれませんね。

片想い

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東野圭吾さんの作品です。俗っぽいタイトルにもかかわらず、内容は重いですね。

片想い (文春文庫)
片想い (文春文庫)
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東野 圭吾
文藝春秋
売り上げランキング: 5082
おすすめ度の平均: 4.0
5 影響された
4 東野作品としては
4 貴重な体験でした
4 自分の思いが伝わらない,それも片想い
3 「性別」をめぐるあらゆる問題を現実的に描いているが、受け入れられない部分もありました

  • 概要
大学アメフト部の同窓会の帰りに、その日来ていなかったマネージャーと遭遇します。かってのマネージャーではなく、男になっていました。さらに殺人事件を起こして逃げていることを告げられます。旧友を家でかくまうことにしますが、事件を追って行く内に人間と性というものが単純ではないことを知って行きます。そして最後にたどり着いた意外な真実とは......

  • レビュー
社会派小説ですね。小説を通してテーマについて考えさせられる小説です。この作品のテーマは「性」。染色体がXYであれば男性、XXであれば女性だと簡単に切り分けられるものではないのだということを教えてくれます。

「性同一性障害」は、3年B組金八先生で上戸彩さんが演じて話題になりました。このドラマでは男性の心を持った女性という立場の人がメインになっていましたが、事はそう単純でないことがこの作品を読めばわかると思います。もちろん逆の立場(女性の心を持った男性)がいるというだけでなく、自分がどちらの性かわからないような人もたくさんいるということです。

そのような人の心は当事者ではない自分にはわからないですが、東野さんは理解の手助けとなる例えを出してくれています。

男と女は、メビウスの裏と表の関係にあると思っています
P.366
メビウスの帯と言うのは普通の紙と違って、表と裏がつながっているものです。連続的なものであるということですね。個人個人で男である部分もあれば女である部分がある人もいる。その割合が中間的な人もいるということでしょう。

タイトルはそのことを踏まえてつけられています。こんなにもずっしりと心にのしかかるタイトルは中々ないと思いますね。

他の見どころですが、殺人事件に関する謎や主人公夫婦の関係も注目ですね。主人公夫婦の関係などは、「性」というテーマを考える上でのスパイスとしてちょうど良いのではないかと思います。

この作品に登場する「サンタのおばさん」という物語が本になっていますね。サンタクロースの会議に女性が登場して大騒ぎになるという内容です。こちらも興味のある方は購入してみてはいかがでしょうか?


サンタのおばさん
サンタのおばさん
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東野 圭吾
文藝春秋
売り上げランキング: 41153
おすすめ度の平均: 4.5
4 サンタクロースの国際化と多様化
5 絵本みたいですね
4 東野圭吾氏らしいショートストーリー
5 東野氏からの子供たちへのメッセージ
4 サンタは心♪
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